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「さて、今日は、店開けたら、即、オーダーのお客様の対応だな。」 「そうよ。開店時間に合わせて来るって言っていたから。」 キッチンで珈琲を飲みながら、朝食の片付けをしている妻の一葉(かずは)に声を掛けたのは、この家の主、神谷蓮(かみやれん)。 彼がいるのは、新宿の繁華街の外れにある小さなアクセサリーショップ。その奥にある居住スペースだ。 ここの店の名前は《ミルキー・ウェイ》。日本語では、天の川という意味だ。店名に合わせて、店の至る所に、星のオブジェが配置されている。とても可愛い。 そして、この店を営んでいるのは、先程から話をしてる年配の夫婦だ。夫の蓮は、この業界では、かなり名の通っている彫金師。彼の作るアクセサリーには、本来かなりの値が付くのだが、この店では、学生でも手軽に買える値段で販売していた。 店員は、一葉一人きり。それは、この店を始めた時から変わらない。 まあ、最近は、娘の茉里菜(まりな)が、時々店を手伝ってくれるのだが…。
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