自分だけの部屋

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神林に連れられて、ミルキーウェイに来るのは、2度目だ。 今日は、神林の運転する軽自動車に乗っていた。後ろの席には、段ボール箱がいくつかと学校の鞄。膝の上には、施設のみんなからもらった花束がひとつ。 引っ越しの荷物にしては、とても少ない。それは、使っていたほとんどの物が、施設の備品だったからだ。 「茉里菜。君の歳になってからじゃ、なかなか里親になってもいいって言ってくれる人は少ないんだから、神谷さんご夫婦には、本当に、感謝しなければならないよ。」 「…はい。」 「それから、わかってると思うけど、言われなくても、自分から進んでお手伝いすること。」 「…はい。」 「やけに素直で大人しいね。…うん、まあ、今日はしょうがないか。緊張してる?」 「…ちょっぴり。」 「大丈夫だよ。私はね、君を預かってくれる神谷さんご夫婦に、少し懐疑心をもっていたんだけれど、あれから何度か話をさせてもらったんだ。とても素敵な二人だって思ったよ。 きっと、君にとっても、この出会いは良いものになると思うな。」 そんな話をしている内にミルキーウェイに着いた。 今日は、お店はお休みのようだった。 お店の横の路地を入っていくと《神谷》って標札が上がった玄関がひっそりとあった。 ピンポーン♪ チャイムを鳴らすと、扉が開いて一葉が顔を出した。 「こんにちわ、神谷さん。茉里菜を連れてきました。」 「神林先生、ご苦労様です。茉里菜ちゃん、いらっしゃい。待っていたのよ。」 車から、積んできた段ボールを下ろして、まだ仕事の残っている神林は、後のことは、くれぐれもよろしくお願いしますと何度も頭を下げて、また来ますと帰っていった。 「さて、蓮が帰ってくるまでに、荷物を片しちゃいましょうか。」 一葉は、にこやかに茉里菜に言った。
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