自分だけの部屋

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午後から、茉里菜は、段ボールを開けて、荷物の片付けをした。 段ボールは何箱もあるが、中身は、大した量じゃない。夕方までには、全部片付いていた。 一葉が用意してくれた小さめの花器に、花束を挿して、机の隅に飾ったら、華やかになった。 ベッドに腰を下ろして、部屋の中をくるっと見回す。 「私の部屋…。私だけの…部屋…。」 施設の中で、使っていた部屋は、3人部屋だった。 以前は、高校生のお姉さん達と一緒だったので、一番歳下の茉里菜は、可愛がってもらっていた。邪魔者扱いされたこともなかった。 でも、今は、茉里菜が一番上で、面倒を見る立場だ。順送りだから、そのこと自体には、文句もないし、下の子達は可愛いと思う…でも、同室の子は、二人とも小学生だ。まだまだ落ち着きがない。その上、茉里菜には、この部屋で、と言うよりも、施設の中で、プライベートな場所がほとんどない。 例えば、ひとり、物思いに耽っていても、ちび達の泣き声や騒いでる声で、思考が無理矢理止められる。酷いときは、それを解決するために、呼びつけられる。 例えば、テスト前だからと勉強していても、横でふざけてじゃれあってる妹達が気になって集中出来ない。この子達に、悪気がないのもわかってる。かつての自分もそうだったからだ。 お姉さん達は、考えも行動も大人だった。だから、大抵のことは、笑って許してくれた。 …でも、私には無理だ。もう限界。 …どこでも構わない、ひとりになりたい。 自分が思っていたのとは形は違ったけど、やっと、夢が叶うんだ。 誰にも邪魔されない、誰にも文句言われない、自分だけのお城が、やっと手に入った。 そう思ったら、やっと笑えた。 「うふっ♪…嬉しい♪」 側にあったクッションを、思わず抱き締めてクスクス笑っていた。
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