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夕方、一葉は、茉里菜と、学校から少しだけ離れた公園の駐車場で待ち合わせをしていた。
下校の人並みが、ちょっと途切れた頃、茉里菜が、誰かと楽しそうに話ながらやって来た。
「お疲れ様、茉里菜ちゃん。」
車の窓から一葉が顔を出して声を掛けた。
「えっと、こういうときは、ただいまでいいのかな?」
「いいわよ、私のところに戻って来てくれたんだから。こういうのは、気持ちの問題。言葉じゃないわ。…ということで、おかえりなさい、茉里菜ちゃん。
…えっと、あなたは?」
「こんにちわ。私、茉里菜と小学校から友達してます宮澤理恵です。」
「こんにちわ。私は、茉里菜ちゃんのお母さんを始めました、神谷一葉です。うふっ。こんな自己紹介、おかしいわね。」
「いえ、分かりやすくて、いいと思います。」
「ありがとう。茉里菜ちゃん、今日は、大丈夫だったのね。」
「なんとか…でも、まだ教室に入る気持ちにはなれなくて…ごめんなさい。」
「謝ることないわよ。蓮との約束は、毎日、学校へ行くこと。ちゃんと卒業することでしょ。まだ、先が長いわよ、春までは。
ところで、理恵ちゃんは、お家は近いの?」
「この公園の向こう側にある、あのマンションです。」
「そう。じゃあ、都合の着くときは、叔母さんとお話ししてね。若い子のお話聞くの好きなのよ。特に恋話なんかね。」
「あっ、はい。…じゃあ、茉里菜、また明日ね。ちゃんと学校来てよ。」
「うん。頑張って来る。」
「それじゃあ、さようなら。」
ぺこりと頭を下げて、理恵は、ポニーテールを揺らしながら、公園を出ていった。
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