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「…ちょっと安心したわ。理恵ちゃん、いい子ね。」
「理恵は、とっても優しくて、私のことも気に掛けてくれていて…。すごく心配掛けてるなって思ってるんだけど…。」
「なら、心配掛けないように、頑張らなくちゃね。とりあえずは、毎日、学校に通えるようにならなくちゃ。それだけでも、理恵ちゃんを安心させられるでしょ。」
「うん。」
茉里菜ちゃんは、とても素直でいい子なんだから、このまま真っ直ぐに育てばいいのにな。純粋過ぎるんだわ、きっと…。
生い立ちは、彼女の上に、重くのし掛かっているけれど、陽だまり園では、暖かな優しさの中で、大切に育てられていたのだとわかるわ。
私達は、この子のいいところを伸ばしてあげなくちゃね。
そんなことを一葉は思いながら家へ向かって車を走らせていた。
それから、毎日、朝夕の送り迎えを、1日も欠かさず、一葉はしていた。
…ある日の帰り道のこと。
茉里菜が、何か言いたそうにしていた。
「どうかした?」
「あの…毎日、送り迎えしてもらえて私、とっても嬉しいです。ありがとうございます。…でも、明日からは、いいです。」
「どうして?」
「だって、夕方は、お店の一番忙しい時間ですよね。それなのに、毎日、私を迎えに来てくれて…。私、お母さんだけでなく、お父さんにも、迷惑掛けてます…。」
「いいのよ。言い出したのは私達だし、蓮もあなたが、ちゃんと学校に行ってることにホッとしてるんだから。」
「…私、頑張って早起きします。だから、送らなくていいです。ちゃんと、ここへ帰ってきますから、お迎えもいいです。」
「そうなの…そんなこと言われたら、ちょっと寂しいかな。でも、茉里菜ちゃんの気持ちは、わかった。
私に言ったことを、蓮にも言ってみて。彼が、納得したら、そうするから。」
「…お母さんが、決められないんですか?」
「私に決定権がない訳じゃないけど、二人で相談して決めたことだからね、やっぱり、蓮にも話して、納得してもらわなきゃ、駄目だと思うのよ。変かしら?」
茉里菜は、小さく横に首を振った。
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