傷痕

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「早くって、いくつの時に結婚したんですか?」 「私も蓮も、22歳だったわね。大学卒業してすぐ結婚して、このお店を開いたのよ。この店は、私達と一緒に生きてきたって言ってもいいかな。私達のもう一人の子供よ。」 そんな話をしているところへ、蓮が顔を出した。 「…悪い、一葉。これ、彰のところ持っていくやつ、今、あがったんだ。ラッピング頼めるか?」 「いいわよ。その間に、着替えといて。あっ、それから、茉里菜ちゃんも連れて行くから。」 「了解。…茉里菜、出掛ける準備してくれるか。俺も、着替えてくるから。」 「はい。」 一葉は、蓮から受け取ったものを、店の作業台で、ラッピングしだした。 茉里菜は、蓮に言われた通り、出掛ける準備をすることにして、飲んでいたマグカップを急いで空にすると、一葉のマグカップと一緒に流しへ持っていく。 「自分の出来ることは、自分でする。」 洗剤を少しつけたスポンジで、マグカップを洗う。蛇口の栓を捻って綺麗に濯いで、カップホルダーに乗せると、2階の自分の部屋に向かった。 「…お父さんとお母さんの大切なお友達って、どんな人達なんだろう。」 まだ会ったことのない人達に思いを馳せながら、出掛ける準備をした。 クローゼットを開けると、中から、先日、一葉に買ってもらったばかりのワンピースを出してきて身に付ける。 クルンと回ると、裾がふわりと持ち上がる。 「ふふふ♪」 陽だまり園には、沢山のチビちゃん達がいる。汚す頻度も、茉里菜達に比べたらずっと多いし、すぐ大きくなって、服が着られなくなる。だから、どうしても、年長者の服よりも、そっちの服を優先して購入することになる。真新しい洋服なんて、滅多に買ってもらえなかったから、一葉が、自分だけのために真新しい服を沢山買ってくれたことが、本当に嬉しかったのだ。 特に、このワンピースは、茉里菜が、どうしても欲しいと思った1着だった。 このワンピースにあわせて買ってもらった小さめのトートバックに小物を入れて、茉里菜は、部屋を出た。
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