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「…穂波、養子をもらわないか?」
「あなた、どうしたんですか。私は、あなたがいれば、別に子供は…。」
「すまない…お前に、人並みの幸せを味あわせてやることが出来ないことだけが、俺の読み間違いだ。
俺は、病気ひとつしたことなかったからな…まさか、子供の出来ない原因が、俺自身にあるだなんて、思ってなかったんだ。」
「それは、あなたの責任じゃありませんわ!そうでしょう!」
「ありがとう…。俺が、普通のサラリーマンだったなら、二人きりの老後もよかったかもしれないが、俺には、親父から受け継いだ、藤崎ジュエリーがあるからな。
俺の代で、潰す訳にはいかんのだよ…。
だから、養子を取る。いいよな?」
「私には、反対する理由がありません。後継ぎを望まれて嫁入りしましたのよ。その子供を産めないのですから、あなたが、養子をと言えば、反対できません。
私は、その子を、自分の子供として、愛しますわ。それでよくて?」
「穂波…本当にすまん。」
長い間、穂波は、碧の苦悩をすぐ側で見ていた。
愛人がいると知ったときは、嫉妬で狂いそうだったけれど、我慢できたのは、自分が、彼の子どもを産めないからだと、思っていた。
跡取りの子供が欲しいという碧の希望を叶えるためなら、何人、愛人がいようと関係ない。
穂波は、彼の子どもを、本当の母親のように、愛して育てる。そういう覚悟をしていた。それが、穂波の碧への愛情の表し方だと決めたからだ。
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