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「そう言えばさあ、さっき、彼女が云々って言ってたけど、いつの間にそんな子出来たの?」
「俺は知ってるぞ。可愛い子だよな。」
「蓮見、見たのか?」
「おう、見た見た。この中じゃ、俺が一番最初だな。指輪の箱持って嬉しそうに、出掛けて行ったからな。その時に、エレベーターホールにいたんだよ、その子。
そうだ、この中の何人かは見てるはずだぞ。ほら、7月にここで個展やった彫金の神谷さんいただろう。あの人のお嬢さんだからな。」
「言われてみれば、いたなぁ、若い女の子。」
「あっ、そう言えば、藤崎のこと、神谷さんは、郁哉君って下の名前で呼んでたな。」
「そう言うことか。仕事と彼女をダブルで、ゲットしてくるとは、やるなぁ、藤崎。」
「仕事と彼女は、別です!!」
「そうなの?」
「彼女とは、子供の頃に出会って、ずっと片想いしてたんです。一応、これでも社会人なんで、ケジメつけただけですから。」
「もしかして、初恋か?!」
「そうですけど、何か?」
何か言われるのかと身構えた郁哉に向けられた言葉は、そうではなかった。
「いいなぁ、それ!初志貫徹!男の純情!幸せになれよ、藤崎!」
「……あっ、はい!ありがとうございます。」
郁哉は、嬉しさで笑みが溢れた。
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