将来設計

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「母さんは、お琴の先生だよ。他に着物の着付けなんかもやってる。」 「そうなの?!」 「うん、趣味と実益ってやつ。お弟子さんの中には、お得意様もいるけど、お店と教室は、別物だよ。 だからね、茉莉菜もジュエリーの方の仕事に拘らなくてもいいんだよ。」 「そうだけど…。お店のことを気にするなって言われても、なるものはなるよ。」 「ありがとう。でも、今はまだ、それを考える時じゃないよ。 僕だって、まだまだ修行中で、ギャラリーの方の仕事をやっと一人立ちしてやれるようになったところなんだよ。 本業の宝飾の方に仕事をシフト出来るようになるには、まだ何年も掛かると思うんだ。 もし、茉莉菜が本気で、店のことを覚えたいって思うなら、僕がそれなりに仕事出来るようになるまでに、色々勉強してくれたらいいんじゃないかな。 僕は思うんだ。茉莉菜は、やろうと思ったら、すんなり、こっちの世界に入れるって。だってさ、ミルキー・ウェイのお手伝いしていただろう。 あすこで取り扱ってるアクセサリーの基礎知識あるだろう?」 「うん。一応、アクセのメンテの仕方とか、使われてる材料のことなんかは、よくお客様に聞かれるから覚えたよ。」 「ほらね。そこが、内の母さんと違うところだよ。 母さんは、宝飾品の社長夫人なのにさ、自分の持っているアクセサリーの保管とメンテをきちんと出来ないんだ。 だからね、必要な時は、父さんに頼んでやってもらってる。最近は、僕が出来るようになったからって、僕に頼むこともあるんだよ。 そんなんだから、仮に店で出ることになったとしても、簡単な接客しか出来ないよ、多分。でも、茉莉菜は違うでしょう。それは、強みだよ。」 強みだと言われて茉莉菜は嬉しかった。
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