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「沙耶香さんは、どうなさるの?」
「あいつとは、別れる。…もちろん、それなりのものは、与えるつもりだ。
長い間、俺のために尽くしてくれたのは、あいつも、君と一緒だからな。」
「…あなた、本当にいいのですか?」
穂波は、碧に大切にされていた。自分は、彼の妻なのだから、最後に、碧が自分の元に戻ってきてくれなくては困る。
けれど、沙耶香のことを考えると、少し胸が痛い…。それは、沙耶香の気持ちが、少しわかるからだ。
碧の愛情をもらって、彼の子供を産む。そういう条件は、ふたりとも一緒。
もしかしたら、その時の彼の気持ち次第では、切り捨てられるのは、自分だったかもしれないのだから…。
ただ、自分は、法で守られた碧の正式な妻であり、それは、唯一、碧を手元に取り戻せる武器だった。それが、今、いい仕事している。
「ああ、もう決めた。」
「わかりました。私もその方向で、心積もりさせていただきますわ。
それで、ご養子になさるお子様は、もうお決まりなのですか?」
「実は、まだだ。一人で決めても構わないのだけれど、やはり、家庭での育児は、君の仕事になるだろう。だから、君の意見をくれないかな。その上で、どの子を養子にするか決める。」
そして、二人は、大河内の案内で、養護施設へ見学に出掛けたのだった。
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