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「上條君は、卒業後は、保育士としての勤務を希望してるんだね。
どこへ勤めるつもりかな?
希望とかはあるのかな?」
茉莉菜は、大学のキャリアセンターで面談を受けていた。
「普通の保育園での就職は、考えていません。」
「じゃあ、どういうところなの?具体的な考えは、あるのかな。」
「はい。私は、中学3年まで、児童養護施設でお世話になっていました。
そこの先生方が、子供達に愛情持って接してくれていたことや、様々な問題を抱えている子供達を前に、沢山の苦労をしていたかを、私は知っています。
私の資格が少しでも役立てるなら、恩返しのつもりで、そこで働きたいと思っています。」
「君のお世話になっていた施設でかい?」
「出来れば、そうしたいです。そこは、私立の施設ですし、園長先生も、よく知っている方なので、駄目元で頼んでみようと思っています。」
「まだ決定ではないのだろう。駄目元だと言うのなら、来年度の一般的なこども園や保育所なんかの募集にも応募する方がいいと思うんだがね。」
「一応、頭には入れておきます。でも、私は、きっと気持ちは変わらないと思います。」
「ふうん。そこまで言うなら、頑張ってみなさい。まだ今なら少し余裕があるからね。慌てず、前に一歩ずつだ。何かあったら相談に来なさい。」
「はい。ありがとうございました。」
とても綺麗なお辞儀をして、茉莉菜は、面談ブースを後にした。
「ふむ、上條茉莉菜は、保育士志望。勤務先は、児童養護施設の指導員を希望と。
今時、珍しく真っ直ぐ育ってるな。きっと、育ててもらった施設や近くにいた大人が良かったってことかな。」
面談後の所見をメモすると、茉莉菜用のファイルをパタンと閉じた。
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