将来設計

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ここが、ミルキー・ウェイの店先だと言うことも忘れて、茉莉菜は、郁哉に飛び付いていた。 「ま、茉莉菜…ここ…お店…。」 「うわっ!…ごめんなさい。」 急に現実に戻って、あたふたしている茉莉菜を見て、郁哉は、ほんの一瞬前まで、真っ赤になって照れていたのに、今は、苦笑いだ。 「二人とも、奥でお話しなさいな。郁哉君、よかったら、夕飯食べていって。」 「急に来たのに、夕飯までは…」 「コラ、若い者が、遠慮なんかしない。それに、君は、茉莉菜の婚約者なんだから、内の息子同然よ。将来のお母様のお願いを無下にする気?」 「い、いえ。とんでもない!!」 「じゃあ、茉莉菜。後、よろしくね。」 「は~い♪」 茉莉菜は、郁哉の腕を取り、にこにこしながら、店を出ていった。 「茉莉菜、嬉しそうだな。」 「きっと、会いたい時に会えなかったからでしょ。恋する乙女なのよ、あの子は。」 「…初めて、新宿の片隅で、あの子に会った時のことを思い出すと、あの頃とは、顔付きが全然違うよ。 世の中の理不尽は、全部自分の上にある。幸せなんて手に出来ないって思い込んでいた頃の茉莉菜は、どこにもいないな。」 「そうね。今の茉莉菜はキラキラ輝いているものね。」 「ああ。輝いてる。もう俺達には、持てない輝きだよな。 俺はな、茉莉菜だけでなく、郁哉君も幸せにならなきゃ、いけないと思うんだ。やっと巡り会えた二人なんだから。 それにな、二人が幸せになることで、周りの人間も幸せな気持ちになれる。そうだろう。」 蓮の言葉に、一葉は、肯定の意味で、優しく笑った。
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