郁哉

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「郁哉。それは、優等生の答えだな。 今、言ったことは、叶えてもらわなければ意味はない。そうでなければ、ここに、お前がいる理由がなくなるからな。 だがな、郁哉…お前は、機械じゃない人間だ。今は、大人になるまでに、沢山の経験をしなきゃならない時期なんだ。 今しか体験出来ないことは、沢山ある。それは、将来、お前の糧になる。ものによっては、武器になるのだから、何も気にせず、好きなことをしなさい。 それから、学生は、勉学するのが本分だから、郁哉が、それを突き詰めようとすることは、間違っていない。 それは、大事なことだから、優先順位の上位で間違いない。 でもな、大学を卒業するまでしか、自由に出来る時間はないんだぞ。 限りある時間の中で、沢山の体験をしなさい。その中で、大人になっても付き合っていける友人を作りなさい。同性だけでなく、異性にも興味をもって、素敵な恋をしなさい。」 「…恋。」 郁哉の微妙な反応に、碧は気が付いた。 「おっ、誰か好きな女の子がいるのか?それとも、俺が知らないだけで、もう彼女がいるとか?」 「…か、彼女なんて、いませんよ!」 「じゃあ、流行りの男の彼女…いや彼氏か。」 「ありえません!!なんで、女の子もいる共学校で、彼氏なんですか!!同性愛になんか、興味ありません!!」 「そりゃそうだな。はははは。」 楽しそうに笑う碧に、郁哉は、それ以上文句を言えなくなった。 「…僕は、心に決めた人がいるので、学校で、恋愛はしません。」 「心に決めた人?…そんなのいるのか?」 郁哉は、顔を赤らめて、『掘り下げないでください』と、部屋に逃げてしまった。
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