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半分逃げるように、部屋に戻った郁哉は、ベッドの上に体を投げ出した。
「…まぁちゃん。」
藤崎家に引き取られる日、あの子の側で、僕が、言ったこと覚えてくれているかな…。
僕だけが、いつまでも拘って、彼女が、忘れてしまっていたら…。
最近、そんなことばかり思うんだ。
「父さんは、きっと嫌がるよね…あすこに、僕が顔を出すこと。本当に、どうしてるのかな…。」
自分の様に、誰かいい人が、養い親になってくれていたらいいな。
目を瞑って、頭の中にまぁちゃんの姿を映し出す。
どうしても、10年前の彼女しか思い出せない。当たり前だ。あれから、一度も会ってないのだから…。
はぁ…あれから10年か。僕が、こんなに成長してるのに、彼女が、成長してないわけないだろ…。
きっと、可愛らしい女の子になってるよね。どんな顔になってるのかな。
今、会って、お互いわかるかな?
自分の中には、彼女への想いがどんどん積み重なっていくというのに…。
あれから、一度も会ってない想像上の今の彼女は、顔こそあの日の彼女だけれど、体は、同級生の女の子達を思い出して当てはめている。
「…初恋なのかな。あれは。」
彼女に会いた。姿を見るだけでもいいんだ。…そんなことばかり、最近思っているせいなのかな、若さが溢れんばかりの郁哉は、下半身がムズムズして仕方ない。
ここのところ、そうなったら我慢できない。ズボンのベルトを緩め、ファスナーを下ろしている。ベッドの上に転がってる枕を、彼女だと思って抱きしめる。
「…はぁはぁはぁ…んっん!うっ!…まぁちゃん…まぁちゃん…はぁはぁはぁ…んふっ!…はぁはぁ…」
部屋は、防音壁だから、とてつもない大きな音を立てない限りは、外に聞こえないのだけれど、郁哉は、とても悪いことをしているみたいに、吐息や喘ぎを堪える様に、顔を枕に埋めて夢想に耽っていた。
「…まぁちゃん。」
いつの間にか、郁哉は泣いていた…。
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