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「なあ、一葉。」
ベッドの中で、蓮は一葉に、話し掛けた。
「なあに?」
「娘を嫁に出すって、こんなにも切ないものなのか?」
「突然、何?どうしたのよ?」
「昼間さ、茉莉菜と昼飯食いながら話していてさ、半年後には、ここにいないんだなって思ったら、寂しいなって思ったんだよ。
当たり前っちゃあ、当たり前の気持ちなんだけどな、改めて思ったんだよ。
世の中の大多数の親は、みんな、こんな風に思うんだなって…。
子供が成長して、家を出ていく。それも、人生のパートナーとなって、その子を守ってくれる大事な人の側へ行くんだぞ。それは、幸せなことなんだって、知ってるのにさ…行かないで欲しいなんて、心の隅で思ってるんだ。
今になって、父親の気持ちってのに気が付くなんてな…。」
一葉は、蓮をぎゅっとハグして言った。
「最初ね、里子として茉莉菜を預かることになって、不安だらけだったわ。だって、いきなり中学生の親になるんだもの。
でもね、あの子が、素直な気持ちで、お父さん、お母さんって呼んでくれて、私達の子供として育ってくれたおかげで、今、私達は、とっても幸せなのよ。
少しくらい寂しい思いしたっていいじゃない。縁が切れるわけじゃないのよ。
あの子は、私達を本当の親の様に思ってくれているのよ。だから、嫁いでも、本当の娘のように、里帰りしてくれたり、いつか可愛い孫を連れて来てくれるかもしれないの。
それは、私達だけに与えられた特権でしょ。」
「ああ、そうだな。嫁に出して終わりじゃないよな。」
「そう終わりじゃないわよ。」
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