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「親になった人達は、みんなこんな気持ちで、子供達の巣立ちを見送ってんだな。」
「そうね。…でも、彰だけは、違うんじゃないかな。」
「えっ。どう違うの?」
「よく考えて、あすこの子供達、立派に育ってるけど、みんな一緒に住んでるわよ。
彩華ちゃんは、お嫁さんに行く側だったけど、結婚してすぐ海外で、その上帰って来たら、奏多君も一緒に、お屋敷で住むことになってたから、寂しさも半分くらいだったんじゃないかな。」
「あいつは、狡いな。」
「狡いの?彰のどこが?」
「あげたら、キリがない。」
そう言って笑顔になっていく蓮に、一葉はホッとした。
「隣の芝は青く見える…他人と比べるもんじゃないな。俺には、こんな優しい奥さんが、横に居てくれるんだし、人並みの親の悲哀ってのも、味わえてる。これで十分だよな。」
「そうよ。十分幸せ。」
しばらく二人、静かにお互いの暖かさを感じていた。
「ねえ、蓮。私達が元気な間は、ミルキーウェイに来てくれる沢山の人達に、私達の愛を届けましょうよ。
それから、茉莉菜がいつでも、ここにただいまって顔出せるように、守っていきましょう。
小さな家だし、小さな店よ。だけど、私達には、とても大きな場所。大切にしていきましょう。これからもずっと。」
「当たり前だ。ここは、俺達の夢を紡いだ場所だ。守らないでどうする。」
「ふふふ。そうよね。」
優しい笑顔が見詰めあっていた。
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