卒業と門出の日

11/31
前へ
/755ページ
次へ
X'masに約束もデートも出来なかった郁哉は、お詫びだからと、年末年始は、茉莉菜のために時間を目一杯使ってくれた。 連日のデートに、茉莉菜は、反対に気を使う始末だ。 「郁哉君、無理してない?」 「無理なんてしてないよ。今の僕に出来ることは、これくらいなんだし。 それに、もし費用のことを気にしてるんだったら、茉莉菜は考えすぎ。僕は社会人で、君は学生。どっちがお金持ち?」 「どう考えても、郁哉君だよ。」 「だろう。それに、僕は、散財するような遊び方知らないから、安心して。 後ね、費用が気になるなら、茉莉菜が仕事始めたら、何でもいいよ、君の気が済むことしてくれれば。」 「うん、ありがとう。初任給は、両親に何かプレゼントって定番だよね。そこに、郁哉君もプラスしとくね。」 「わかった。じゃあ、楽しみに待っておくよ。 それより、もうすぐ卒業だね。卒業旅行とか行かないの。今時は、みんなやるんじゃないの?」 「うん、大学の友達は、やりたいねって言ってるけど、行き先がなかなか決まらないんだよね。鋭意検討中。」 「真鈴さん達とは行かないの?」 「真鈴達とはね、近場で、普段なら絶対に行かないようなお店でご馳走食べて、高級ホテルでお泊まりしようって言ってるの。」 「それいいね。」 「遠出するだけが、お祝いじゃないでしょ。」 「そりゃそうだ。」 「郁哉君は行ったの?」 「僕は、俊輔に誘われて、同じゼミの奴ら、それも男ばっかりで、北陸グルメ旅だったよ。」 「女の子は、いなかったの?」 「実は、全員断られたらしいんだ。みんな彼氏持ちで、彼氏と行くからごめんね…だって。」 「それは、それは、御愁傷様です。」 「それは、言いすぎでしょ…本当のこと過ぎて。」 二人で、思わず笑ってしまった。
/755ページ

最初のコメントを投稿しよう!

100人が本棚に入れています
本棚に追加