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年始の挨拶に、藤崎家にやって来た茉莉菜は、ちょっぴり緊張する。
「あら、茉莉菜さん、今日はお着物なのね。とても似合っているわよ。」
「ありがとうございます。お義母様。」
「さあ、上がって頂戴。家の人も、郁哉もお待ちかねよ。」
リビングへ通されると、そこには、見知らぬ男性が、3人いた。
彼らは、身なりから、なんとなくだけれど、郁哉の父と同じ様な立場の人達なのではないかと、茉莉菜は、思っていた
「明けましておめでとうございます。お義父様。」
「茉莉菜さん、待っていたよ。ほら、郁哉、茉莉菜さんのエスコートは、お前の役目だろう。」
「わかってるよ。…みんなの前で、そんな風に言わないでくれる。」
そう言って、立ち上がって、茉莉菜の側へ来ると、こっちに座ってと、用意されていた席へ案内してくれた。
「こちらは、茉莉菜さん。郁哉の婚約者だよ。」
「初めまして、上條茉莉菜と言います。」
彼らは、興味津々な顔で、茉莉菜を見ていた。
「可愛らしいお嬢さんだ。」
「すみにおけませんな、郁哉さん。」
そんな風に言われて、郁哉は照れていた。
「藤崎が、婚約と言っていたが、郁哉君、お式の予定は何時だい?」
「6月です。羽柴さん。」
「ジューンブライドか、いいねえ。」
彼らは、郁哉君のお父さんのゴルフ仲間で、羽柴さんと郁哉が呼んでいた人が、この家の主治医をしているお医者さん。とても優しそうな叔父様。
奥に座っていた人は、野島さん。この人は、貫禄十分な叔父様。運送会社の社長さん。
残りのひとりが、井上さん。都内でも有名な私立校で理事をしているそうだ。
「そうだ、茉莉菜さん。神谷さんを、ゴルフに誘っても大丈夫かな?」
「父をですか?…たぶん、火曜日以外なら大丈夫ですよ。区のワークショップは、その曜日ですから。」
「ワークショップ?…それは、欠席出来ないのかい。」
「無理だと思いますよ。日にちや回数決まってますし、講師がゴルフでお休みなんて、生徒さんから怒られますよ。」
「生徒でなくて、先生なのか…それなら、仕方ないね。他の曜日で計画しよう。」
お義父様達は、なんだか楽しそうだ。
「郁哉、神谷さんにOKをもらったら、お前も行くんだぞ。」
「えっ、僕もですか?」
「ゴルフは、接待にも必要だからな、経験しておくのも必要だろう。それに、神谷さんとも話題が出来るだろう。これも親心だよ。」
そう言ってから、お義父さんは、楽しそうに笑っていた。
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