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澪は隣の居間にいる。ダイニングテーブルの椅子に座って、朝のアニメが流れているテレビを見ながら、味わうようにして何かを飲んでいる。透明のグラスに入った黄色い飲み物を。 ああジュースだ。否――正しくはオレンジ果汁十パーセント入り飲料。ジュースもどきだ。自宅では特別な日――誕生日やクリスマス――にしか飲ませていない。
「澪にはいつも、牛乳を飲ませてるんです」
「たまにはいいじゃないの。ここにいる間ぐらい好きなもの飲ませてあげたら」
私はそうですね、と同意することができなかった。
糖分がたっぷり入った虫歯生成ドリンクを、澪にはできるだけ飲ませたくなかった。とくに今は生え変わりの時期。虫歯になりやすいのだ。
義母がフライ返しで目玉焼きを掬い、白い大皿にさっと載せた。手際が良い。
「そんなに澪ちゃんの食事を管理したいんなら、さっさと起きればいいでしょ」
その通りなので、私には言い返す言葉がなかった。
「コーヒー淹れます」
もう三人分の厚切りトーストは食卓に並んでいる。ガラスの器に入ったヨーグルトも三つ。その中には、義母特製のリンゴのコンポートが混じっている。
コーヒーを淹れるぐらいしか私の仕事はなかった。
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