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配偶者が照れ笑いを浮かべて、頭を掻いた。白髪がきらっと光る。もう四十代半ば。お互い年を取ったものだと感慨に耽りそうになる。
「おまえも座ったら」
近くで立たれていると、こちらの居心地が悪くなる。
配偶者が嬉しそうに笑って、向かい側の席に座った。沙希がノートパソコンを持って、リビングに入ってくる。
「お父さんがいなかったから、ネットできなかったんだよね」
「そうそう、最近家のネットが不安定なのよね。さっきもネットが繋がらなくて困ってたんだ」
ああ、だから帰ってきたときに喜んでいたのか。俺が個人で使っているWi‐Fiを待っていただけだったんだ。少しがっかりした。そうだよな。冷静に考えれば、俺が帰ってきたぐらいであんなに喜ぶわけがない。
「ね、お父さん、今度ここに行こうよ。三人でさ」
沙希が椅子に座り、テーブルにパソコンを置く。ディスプレイを見てみる。そこには最近オープンしたばかりの地方のアウトレットモールが映し出されている。
「ここのアウトレット、好きなブランドばっかり入ってるんだ」
「おまえ、受験生だろ」
「たまには息抜きも必要じゃん? いつもは頑張ってるんだから」
「そうよ。いつもはね、ほとんど自分の部屋で勉強してるのよ。本当にやってるかは見てないからわからないけど」
「やってるってば」
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