24人が本棚に入れています
本棚に追加
「大学の費用とか。国立に行ったら、仕送りするんだろ? 金銭的に世話になるから、媚びを売ってるとか」
たしかに、それはありそうだ。俺の機嫌を損ねて、仕送りをしてもらえなくなったら困るだろう。
「あの二人にはずっと苛々しっぱなしだったけど、この一週間でずいぶん居心地が良くなったよ。今更って感じもするんだけど」
だって美加と約束している。沙希が高校を卒業したら、離婚すると。
「ふーん。いちいちイラッとしてたんだ。それって――」
田村が考え込むみたいにして、言葉を切った。
「なんだよ」
「いや、うん……そこまで冷めきってないかな、と思ってさ。俺が元嫁さんと離婚したときはもっとこう――無感情だったな。素通りするんだよ。あいつのやることなすことに、なんの感情も芽生えないっていうか。どうでも良くってさ」
「――そう」
「根本的にはおまえ、家とか奥さんとか娘さんとか――好きなんじゃないの。後悔するなよ、離婚したら後戻りができないんだから」
最初のコメントを投稿しよう!