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真面目な顔になって、田村が諭してくる。離婚経験者の言葉は、なんだか重く響く。相手の行動に、何も感じない――離婚寸前の夫婦関係はそういうものなのだろうか。俺は配偶者の作った弁当を、平気で食べている。本当は今日、弁当が食べられなくてがっかりしていた。居酒屋のランチメニューは、一口目は美味しいけれど、すぐに飽きる。味が濃い。匂いがしつこい。どの惣菜も同じ風味。
「食って大切だよな」
「そうだよ、そうなんだよ。離婚して困ったのは食事だった。自分で作るしかないんだからな。今度遊びに来るか? 結構俺、料理が上手になったぞ」
田村が胸を張って、料理のレパートリーを挙げていく。俺もそのうち、田村みたいになるのだろうか。離婚して、独り身になって、自炊するようになって、美加とセックスするようになって、いつかは彼女と再婚する。もしかしたら、この年で、子供を授かるかもしれない。美加はまだ若いから、それも可能だろう。いや、俺はもう無理なんじゃないか。もう四十五歳だ。今子供を儲けても、子供が成人するころにはおじいちゃんだ。美加は俺の介護をしてくれるんだろうか。急に二十以上の年の差が重くのしかかってくる。付き合う分には問題がないのに。彼女は将来のことをどう考えているんだろうか。
「それにしても――おまえと理恵子さん、お似合いだと思ったんだけどな。結婚式ですごく仲良さそうにしていたし。誓いのキスが長すぎて笑ったよ、そういえば」
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