ほころびをつくろうとき

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 ――は? 肺がん? ステージ? 余命宣告? 単語の意味はわかるのに、それらをつなげて理解することができない。 「たっくんがいるときは、無理して動いてたけど、もう無理なの。限界」  なにを馬鹿なことを。元気でピンピンしていたじゃないか。部屋の掃除やら、夕飯作り、弁当作りに―― 「明日の朝、家を出るから」 「どこに行くんだよ」 「ホスピス。抗がん剤の治療は受けない。あとは、できるだけ苦しまない死に方をするだけ」 「ホスピスって――どこの」  信じられなかった。ホスピスに行くだって? だって元気じゃないか。咳はしてるけど、咳は激しくしているけどでも―― 「教えないよ。――あのね、関係を修復したくてたっくんに優しくしたわけじゃないから。私が死んあと、ぜんぜん悲しんでくれないのが悔しかっただけだから」 「なんだよ、それ」     
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