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配偶者がぷっと笑った。沙希の笑い方と同じだ。
「コーヒーお代わりする?」
そう言われて気が付いた。コップが空になっていることに。食べ物には手を付けず、コーヒーばかり飲んでいた。少し濃いめに淹れられたブラックは、俺好みの味だったから。
「ああ、お願い」
すんなりと声が出る。
トーストもベーコンエッグもサラダも美味しかった。朝からこれだけ食べられると、体が気持ちよく目覚めてくれそうだ。二杯目のコーヒーもあっという間に飲み干してしまう。
向かい側の席で、配偶者と沙希はとりとめのない話をしている。沙希は受験生だから基本は勉強ばかりしているが、たまに息抜きと称してテレビを見ているらしい。その番組が面白いらしく、配偶者も一緒になって見ているとか。この前駅前の店で見たコートが可愛くて欲しくなっただとか。そういう話が俺の耳を掠めていく。
つい食卓に長居してしまった。俺が身支度を整え、カバンを持って玄関に向かうと、配偶者がパタパタとスリッパの音を立てて追いかけてきた。
「ほら、持って行きなさいよ。おいしいから」
バンダナで包んだ弁当を、両手で差し出される。
「ああ、じゃあ――」
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