おばあちゃんと私

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 数週間後。  久子おばあちゃんの旅立った日は、抜けるような青空でした。  久子おばあちゃんは最期まで穏やかな眼差しをおじいちゃんに向け、そっと手を握っていました。時々花のない桜の枝を見つめ、満足そうに微笑んでいます。  心電図のモニターが、久子おばあちゃんの最期を告げた時。  いつも無口だったおじいちゃんは、大きな声で泣き出しました。部屋の外に響くくらい大きな声でした。  ただただおばあちゃんの手をきつく握り、いつまでも誰よりも大きな声で泣いていたのです。  ――病室の少し開けられた窓からは、うっすら春のにおいがします。  病院の玄関に植えられた桜の木が見えました。枝先のつぼみはもう数日で開くようです。  
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