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コーヒーを飲み終わる頃、チサが2人分の味噌汁とご飯を持ってきた。彼女の味噌汁は不味いわけではないが、少しだけ薄いと思う。だが最近になって丁度良いと感じるようになってきた。これも歳をとった証拠の一つだろう。
「今日はどこかに行くの?」
彼女が聞く。味噌汁をかき込むフリをして下を向き、表情を隠しながら答えた。
「うん、今日は病院で検診の予約があるんだよ」
嘘ではなかった。そうなった理由は知らないが、タイムマシンは必ず病院に設置してある。
「そうなの?私は昨日行ったわ。そういうことなら一緒に予約すればよかったね」
心にもなく「そうだね」と返してから、目だけを彼女に向けた。彼女の髪は、今度は口元まで隠してしまっていた。
罪悪感が無かったわけではない。だが結果として、僕は病院まで足を運び、受付を済ませてタイムマシンの前まで来た。そうさせたのは何だろう。一ヶ月前の予約で既に、10時間分の30万円という高い金を払ってしまったからだろうか。それとも心のどこかではチサとの暮らしに不満があったのだろうか。
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