土の下のインテルメッツォ

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 やがて、女の後姿の向こうに、壁が見えた。地下道の末端に近づいていた。細い通路に入ってから、ほんの百メートルぐらいしか歩いていないような気もするし、何キロも歩いたような気もする。突き当りの右手か左手かに、きっと階段があるのだろう。女は角を曲がり、先んじてそれをのぼるだろう。ならば私もそれに倣って地上に出ようという気になった。いったい何のために、どこへ向かっているのか、ずっと目的のなかったこの行進に、終止符が打たれるときが来るわけだ。私は歩くことに喜びを見出しかけた。行き先があれば、歩くことに意味が生まれる。その瞬間、私は生き物らしく動いている。
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