土の下のインテルメッツォ

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 それは大きな姿見だった。私の立っている場所からは、無味乾燥なタイルの壁しか映っていない。地下道の行き止まりに取り付けられた鏡。いったい何に使うのだろう。何気なく背後を見やる。細く薄暗い回廊が、果てしなく伸びている。目を凝らしても終わりが見えず、代わりに針の穴ようにかすかな闇が続く。通路の、数字に換算できないほどの長さを視覚に訴えている。それほどの距離を歩いてきた実感がないのが不思議である。  女の後姿はもうなかった。私は壁のほうに向き直った。
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