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地上には登れないことが分かった以上、この通路を行き切ることに意味はない。だからもう引き返してもよかった。逆に、どうせ無意味なら、あと数歩進んでしまってもよいのではないか? と私は思った。あるのはただの鏡だ。何を恐れることがあるのだろう。私は私の姿を視認するだけなのだ……。そこで私は気づいた。愕然とする。自分の名前も、年齢も、性別さえも思い出せない。どんな容姿をしていたのかも、記憶になかった。私は私だ。それは間違いないが、その私はいったい誰なのだろう。どこからきて、いつからこの地下道にいるのか。
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