土の下のインテルメッツォ

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 多様な人々が行きかう。くたびれたブルゾンを着て、背筋を曲げて歩く髪の薄い初老の男。大股で勢いよく歩く、背の高いスーツの若い男。談笑しながら、漫然とした速度で連れ立っていく、同じような服装をした二人組の少女。実際、彼らは私と何が違うのだろう。目的があるように見えるけれど。きっと彼らからすれば、私自身もそう見えているはずだ。途方に暮れたように右往左往しているわけでもなく、どこかを目指しているかのように、私は装っている。彼らが見るのは、前方から近づいてきて、すれ違う、その一瞬。あとは遠ざかるだけ。他人の行く先を確かめるすべはないのだ。
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