土の下のインテルメッツォ

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 私は思った。このまま先へ進めば、いずれ無数に枝分かれする地下道の末端に至るだろう。そこには確実に、地上へ上る階段があるだろう。思えば、この冷たい石に囲まれた回廊を、目的もなく歩いていることを自覚してから、外へ出るなど考えたこともなかった。考えたこともなかったから、地下道の端まで行けなかったのか。途中にある階段も、エレベーターも目に入らなかったのか。記憶があいまいだから、因果関係が上手くつかめない。女性の足取りは変わらない。一定の歩幅で、私を引き離しもせず、追いつかれもせず、淡々と進む。私もまた、歩調を変えずに進む。
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