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歩きながら、本当に怖いものに出会ってしまったらどうしようと考えていた。幸い僕はいつか古い神社の境内で拾った石を、お守りにして持ち歩いていた。一見何の変哲もない石ころだが、見ようによっては胡坐をかいて座る人物のようでもある。かたちは大まかな三角形をしていて、三つの角のうちひとつが丸みを帯びて盛り上がり、丸みの真ん中に目と鼻のようなくぼみが穿たれているのであった。神社では、石をご神体として祭っている場合が多くある。つまり石に神様が宿るのである。そう思って眺めれば、この石とて、とても霊験あらたかなものに見えてくる。僕は普段、小さな袋にその石を入れ、袋の口には紐を通して首から提げていた。心持が悪いときに袋の上からでも、また取り出してでも、握り締めると不思議と落ち着くので、重宝している。怖いものに出会っても、たぶんこの石が助けてくれるだろうと考えた。すると少し気が大きくなって、足取りがしっかりしてきた。
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