嘘吐きの世界にて。

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 思い返せば、確かに親友は誰かを鮮やかに嵌めてみせた。嵌めてみせたものの、其処に嘘を用いただろうか。改めて問われれば、オレは今更ながら自信を消失していた。  例えば不良生徒が悪戯に仕掛けた魔法陣。其処に仲間の誰かが掛かったと親友は告げ、悪戯を台無しにした上に不良生徒の悪戯を白昼の下に晒した事がある。其れがもしも、縦しんば親友が己の手で成した事とは言え、彼等の仲間の誰かが本当に「魔法陣に掛かっていれば」其れは明確には「嘘」とは言わないだろう。  今になって思い返せば。あまりに手遅れだけれど、長い付き合いの中、此の男が人を陥れる際、或いは教師に取り入る際、明確に「嘘」と呼ばれる物を用いた事があっただろうか。其の答えは混乱と後悔の最中にあるオレにも導き出せる程、至極単純に、明快に。  あの時。屋上で見せた嘲笑が、アンタの最初でさいごの、嘘だったのだ、と。
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