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それから三日後の夕方、玄関のチャイムを鳴らすものがあるから出てみると、猫だった。あの日出て行ったのと同じように二本足で立ち、切れ長の目で私を見下ろしていた。近くで見るとずいぶん背が大きいのにも驚いたが、もっと驚いたのは、出てゆくときは裸であったものが、今度は服を着ているのだった。麻で織った着流しに木綿の帯を締め、その襟元から毛むくじゃらの猫の頭がにょっきり生えている。私が思わず後ずさると、猫はそれに合わせてずいっと前へ出てくる。後ずされば後ずさるほど、猫はこちらに迫ってくるようで、私は恐ろしくなって足がすくみ、しりもちをついてしまった。猫が私を見下ろしながら、耳まで裂けた口をかっと開いたが、その間に覗く歯が、あの小さな身なりをしていたころとは比べ物にならないほど、恐ろしく鋭く目に映る。私は思わず叫んだ。
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