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老人は闇の中に消えては現れて、東郷に激しい連打を繰り出した。闇に隠れると気配が忽然と消え、しかし現れるとこの上ないほどの激しいオーラを身にまとって東郷に襲い掛かる。息もつかせぬ早業で繰り出される打撃の一つ一つが全く威力を損じず、機械なんぞよりもよほど精密に、冷酷に東郷の体へ加撃していった。東郷は気配が現れた瞬間をより素早く、より素早く察知することで老人の動きに対応していたが、やはり人外の気配の得体の知れなさは、心にいくばくかの惑いを生じさせ、見切りを寸分で狂わせるのだった。まるで鞭で打たれたか、あるいは丸太に叩きつけられたかのような痣や生傷が、早くも東郷の体中に走り始めた。いまや体がひとつ揺らぐたびに意識が遠のいてしまいそうなほど、耐え難い激痛がその身を捉えて離さなくなっていた。
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