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僕らは付近の雑居ビルにあるカフェへ向かった。薄暗い、小さなカフェだった。座席は八つ。こげ茶の木組みの椅子で座面にオレンジのビニールが張ってある。机は同じ色のこげ茶で、天井から下がるペンダントライトの曇った光を、鈍く反射していた。君はハーブティーを頼み、僕はコーヒーを頼んだ。店員は白いシャツに、黒いエプロンをしている。若い女だ。こしのある茶色の髪を後ろにまとめていた。店全体がセピア色の写真のようである。
僕らは何か目的があって出かけてきたのではない。僕は仕事をしていない。君は仕事をしているが、今日は仮病を使って休んだ。二人とも、一日予定がない。だから街で会うことにした。正午に待ち合わせて、最初は晴れていたが、一時間前から雨が降り始めた。動物園でも行こうと思ったのだけれど、これでは興ざめである。僕はペンギンや、白熊が見たかったのだ。しかし雨の中で檻の前に立っても、ストレスが増すばかりだ。
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