第2章 スリーピングエッグ

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『ハイパー』は、特異な力など何も持たない一般人から生まれるのだが、その兆候が原因不明の昏睡状態であり、通称『スリーピング・エッグ』と呼ばれていた。年齢、性別、時間帯、場所などに関係無く突然意識を失い、覚醒したときは怪物に生まれ変わっているのだ。  そして『スリーピング・エッグ』は、別の怪物をも生み出した。身体の一部が異形に変化した、『ビースト』と呼ばれる者達である。  どちらに変化するかは覚醒してみなければ解らず、その存在に困惑した各国政府は昏睡に陥った人々を眠らせた状態に保つことで対処していた。当然のように差別や排斥主義者と擁護団体が対立し、半年ほど前には『スリーピング・エッグ』収容施設が排斥主義者のテロにより爆破され、十数名が眠ったまま命を落としている。  オッドマン夫妻が『ハイパー』に消された理由として、『アンチ・エッグ』のスポンサーである可能性が考えられた。 『アンチ・エッグ』とは、資金を提供し異能の者達を消し去ろうとする影の存在で、社会的に地位のある者や金持ちが多い。彼等の多くは保守的な思想をもち、我が身を守ることに金を惜しまないのだ。  写真で見たオッドマン氏は、柔和で人柄の良さそうな人物だった。夫人もセレブを気取ることのない、慎ましく優しそうな女性だ。そのうえ夫妻はボランティア活動に熱心であり、ニューヨークだけでなく各地方の児童養護施設に多額の寄付をしていた。     
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