第2章 スリーピングエッグ

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 書類上、アリシアは既にオッドマン夫妻の養女である。ここはアリシア・オッドマンと呼ぶべきなのだろうが、言葉尻に迷う。  緩いウエーブの美しく長い黒髪、琥珀色の瞳、薄いピンク色の肌。アリシアは誰もが抱きしめたくなるような可愛らしい少女だった。オッドマン夫人が生きていたら、セレブ向けグラビア雑誌の理想的な母娘モデルになれただろう。 「こんにちはアリシア、私はカレンよ。少しお話ししても、良いかしら?」  アリシアの視線が宙に泳いだ。しかし、きつく結ばれた唇は開かない。 「少しだけど食事も出来るし、トイレも自分で行くわ。でもカウンセリングルームから、一歩も外に出ようとしなくて……車椅子に乗せれば、どこへでも嫌がらずに行くんだけど」  パパとママになってくれる人が突然消え、アパートメントの4階から飛び降りたのだ。ショックと混乱で、何も考えられないでいるのだろうとメアリーが説明した。  一時も早くカレンは、アリシアが事件に無関係だと証明したかった。それがもう一つの可能性を、否定することになるからだ。  アリシアが『ハイパー』である可能性……。     
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