第1章 クリスマスの惨劇

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 事件現場にいたのは主人である弁護士夫妻と、今日から娘になるはずだった8歳の少女。そして、ゲストとして招かれた児童養護施設の園長。 「ハイネマン園長の容態は?」  本部から掛かってきたらしい電話に応えるリタの声で、カレンは再びリビングに戻った。 「まだ手術中だって。何カ所も複雑骨折していて、かなり時間が掛かるらしいよ」  気の毒そうに肩をすくめたリタとは逆に、カレンは心の中で舌打ちする。本音を白状するなら、今すぐ唯一の目撃者であるクラウス・ハイネマン園長を取り調べたかった。  クリスマス・ディナーに招かれたハイネマン園長が、アパートメントを訪れたのが十九時。夫人に出迎えられリビングでオッドマン氏と挨拶を交わし、席についてワインを注がれた時に事件が起こった。  目の前に座っていたオッドマン氏が、突然かき消すように消えたのだ。  悲鳴を上げた夫人を落ち着かせ、ハイネマン園長はまず部屋から出て助けを呼ぶように指示した。室内に得体の知れない武器を携帯した敵がいた場合、危険だと判断したからだ。  ところが玄関に向かう途中、夫人までもが声を上げずに消えてしまったのだ。  玄関が使えないと思ったハイネマン園長は、咄嗟に8歳の少女を抱きかかえリビングの窓から飛び降りた。     
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