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アパートメントの周りは、クリスマスイルミネーションに彩られた低い植え込みに囲まれていた。しかし少女を抱え4階から飛び降りた成人男性を、無傷で受け止めるには及ばない。ハイネマン園長は重症を負いながらも、一階のカフェの店員が呼んだ警察に事情を話し意識を失った。少女に怪我はなかった。
カレンが知り得た情報はこれだけだが、殺害方法で犯人が何者であるか特定できた。
一瞬にして肉体を素粒子分解し、黒い残滓に変える力を持つ『ハイパー』。それも一晩に二人の人間を消し去ったことから、かなり高い能力者に違いない。彼等は人間の姿をしているが、異能の力を持つ化け物なのだ。
現場の状況からカレンは、一番近いERで手術中のハイネマン園長を疑っていた。怪我は、偽装工作の可能性がある。同じ病院でサイコセラピストに保護されている少女も、可哀想だが会って話を聞かねばならない。
しかしカレンに、どこまで捜査権限が与えられるだろうか?
「あのねぇ、カレン……言いにくいんだけど」
「解ってる、本部長がFBIの『Xファイル捜査官』を呼んだんでしょう?」
リタから遠慮がちに話しかけられ、思考を中断したカレンはジョークを返した。先ほどリタが受けた電話は、ある調査機関の介入を知らせてきたのだ。
『ハイパー』が絡んでいるとすれば、遅かれ早かれ顔を合わせなくてはならない連中。しかしカレンは、彼等に捜査を委ねるつもりはなかった。どんな強面が来ようと対等に渡り合い、合同捜査に持ち込んでみせる。
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