第1章 クリスマスの惨劇

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 このガキ、小賢しい口をきく。警察が軽んじられた怒りとは別に、少年はカレンを不快な気分にさせた。しかし今は、冷静な話し合いが必要だ。『T・アイズ』に抗議するのは、後回しにした方がいい。 「そんなもの、必要ないわ。私はニューヨーク市警特捜本部のカレン・コール。ところでストレイカー調査官、あなたの言うところの一方的な条件提示は、受け入れて貰えるのかしら?」  カレンの言葉にストレイカーは、再び微笑みを返すと肩をすくめた。 「この件に関して当局は、全権限を僕に一任しています。僕としては……そうですね、コール刑事が素敵な女性なので条件を受け入れても構わないかな?」 「なっ……あなた一体、どういうつもりっ!」  冷静に話し合うつもりが一転し、カレンは思わず声を張り上げた。馬鹿にするにも、ほどがある。 「失礼、冗談が過ぎました。しかし権限の一任は事実です、『T・アイズ』は改めて調査協力を申し出ましょう」  毒気を抜かれたカレンは、ただ呆然と目の前の少年を見つめ返した。
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