第2章 スリーピングエッグ

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第2章 スリーピングエッグ

〔1〕  憮然たる面持ちで、カレンは車のハンドルを握りしめていた。  少女が保護されている病院へ同行したいという、ストレイカー調査官の希望は断った。だが意外なほど素直に引き下がった態度が、どうも気に掛かる。  ストレイカーの言うとおり、『T・アイズ』は『ハイパー』の調査に長けていた。カレンや警察の知らない情報を基に、様子を見ているのかも知れない。  事件現場から一〇分ほど車を走らせると、豪奢なホテルを思わせる外観のノックス総合病院が姿を現した。住人のステイタスに合わせて、高額だが優れた医療技術と設備を提供してくれる病院である。カレンは一般用駐車場に車を止め、最上階にあるラウンジに向かった。個室での面会はストレスを与えるからと、セラピストに指示されたからだ。  左手にセントラル・パーク、右手にイーストリバーが眺められる素晴らしい眺望。しかしカレンは窓から離れ、ゆったりとしたソファに身体を沈めると吹き抜けの天井に切り取られた青空に意識を固定した。鼻持ちならない少年に腹を立てるのは、時間の無駄である。今は事件を整理し、許された面会時間内により多くの情報を得なくてはならない。     
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