神の六畳間

6/15
前へ
/15ページ
次へ
 窓を開けると、ぬるまったそよ風が流れ込んできた。埃っぽかった。田舎の空気とは全然違った。奥行きが無くて息苦しかった。私は外の景色に目を凝らした。灰色のビルの群れが、ほど遠くない場所に杭のように突き立っていた。あれは、天に伸びているのと同じ程度に、地面をえぐって存在する街なのだった。目に見えていることがすべてなのではない。だが、それを思っていても埒があかない。問題は、野菜や、果物や、缶詰をどうするかということ。リンゴやバナナは最悪そのまま食べるとして、なぜ野菜はキャベツだけなのだろう。肉や玉ねぎやニンジンがあれば、回鍋肉になったのに。そして缶詰の中身はなんなのか。これは開けてみないとわからないのだった。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加