神の六畳間

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 私はバナナを手に取って皮をむいた。白く、湾曲した、果肉が現れた。まじまじと見つめると、表面には細かい筋がたくさん走っていた。だからなんだというのだ。絵を描くわけじゃないのだ。おしりに突っ込むわけじゃないのだ。私はそれを正式に頬張り、正式に食した。バナナに関してはこれが私の限界だった。口の中には甘みと共に、やるせなさが広がった。バナナを食し終わるまでには三十秒はかからなかった。あとには、ところどころが黒ずんだ、黄色い皮だけが残った。ひんやりと、ぐにゃりとして、情ない物体だった。ほのかに甘い香りがした。私はそれを憎々しげに窓の外へと放り投げた。バナナの皮は重力の法則を無視して果てしなく飛び、無限に広がって、空を黄色くした。万歳。
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