神の六畳間

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 だが、喜ぶのはまだ早い。リンゴとキャベツと缶詰が残っている。缶詰は最後にとっておくとして、まずはリンゴである。これは固い。人に投げつけたら凶器になりかねない代物だ。そして赤い。が、赤いのは皮だけで、それも真紅というわけではない。だから、赤いことと固いこと、どちらを重んじるべきかといえば、固いほうの性質を重んじるべきだった。そうあるべきだった。食べることはもう選択肢にあってはならない。私はすでにバナナを食した。バナナとリンゴを同時に中に入れると、私の胃袋は破れるようにできている。血を吐いて死ぬことになっている。今、そう決めた。
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