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恋人に、
「あなたが物事をすべて台無しにしてしまうのは、何もかも、考えすぎるせいよ」
と、言われたので僕は頭蓋骨を開いて、中から脳みそを取出し、ほどいて毛糸のようにしたあと、棒針につないで編み物を始めた。ロッキングチェアーに深々と座り、緩やかに、かつ一心に僕は編み物をした。彼女はその一部始終を辛抱強く見守っていた。途中、テレビを見たり、本を読んだり、お菓子を食べたりして暇をつぶしていたが、基本的には僕のそばを離れなかった。僕は空っぽの頭で、幸せとはなんだろうか、と、ずっと問い続けていた。答えが出ないのは、脳みそが毛糸のようになってしまったせいばかりとは言えない気がした。不思議と痛みはなかった。
そして二か月がたった。毛糸になった脳を編み続けた結果、僕の手元には一本のマフラーが完成していた。充実感に満ちた心持のまま、僕は彼女にそれを見せた。幸せとは何か、分かったような気がしていた。
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