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お祝いに酒を飲もう、ということだから、何を祝ったらよいか、思案した。酒を飲むに足る理由が無ければ、酒が飲めない時代になってしまった。どこで、誰が見ているか分からないのだ。つまらない理由でワインのコルクを開ければ、たちまち手が後ろに回り、裁判に掛けられてしまう。こんな若さで懲役に科せられて、人生を棒に振りたくはない。もっとも、そんなに若くもないのだが、どっちにしろ時間の無駄だ。そうまでして酒が飲みたいか、ときかれれば、飲みたいと答えざるを得ない。僕の手にはワインのボトルが握られている。大好物のシュタインベルガーを、二年ぶりに手に入れたのだ。ドイツワインの中ではすこぶる美味と名高いこの酒も、今ではどこを探しても滅多にお目にかかれない、幻の逸品となってしまった。町はずれの酒屋の片隅で見つけたそれを手に入れるために、僕は商売道具のバイオリンを質に入れてしまった。
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