キミは覚えているかな。

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入学式、桜が満開でとても綺麗だったこと。 離れたらいいのに、キミは真下で桜を見上げてたこと。 同じクラスになって、キミと仲良くなってきて、連絡先だって交換したのに。 キミってば、何も言わずに突然入院したんだもん。びっくりしたよ。 理由はもう覚えてないな。 それからはキミと学校で会えなくなって、寂しくて毎日キミのお見舞いに行ったよ。 色々あって、季節は夏に変わっていたよね。 ある日キミが言い出したのは、花火大会だった。 もうだいぶ良くなってきてるから、外出の許可が出たんだって嬉しそうに話していたね。 花火大会当日、キミは調子よさそうで、二人で屋台を見回ったね。場所取りもしてさ、かき氷なんか食べたりして。 花火、綺麗だったね。 その次の日、キミのお母さんから電話が来て、キミがいなくなるかもしれないって言われたのは、鮮明に覚えてるよ。 もちろんキミが心配で、自転車とばしてキミの病院に向かったんだ。 キミの病室についた時にはもう遅かったけど。 キミに話しかけても返事がなくて、悲しかったよ。 家に帰っても信じられなくて、信じたくなくて、でも結局は信じなきゃいけなくて。 あの時は泣きながら怒ってた。なんで、どうして、って。 その時以上に悲しいことはまだ無いよ。 最後になったけどさ、キミ、花火大会のとき、「好き。」って言ったでしょ。気づいてないと思った?キミの横顔、真っ赤だったよ。 こっちも「好き。」って言ったのは、気づいた?恥ずかしかったのに、気づいてなかったとかナシだからね。 じゃあ、もう終わろうと思います。 ずっと先になると思うけど、そっちに行ったらまたよろしくね。 さよなら。 ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- まだ動かない。動けない。自分で書いたはずの手紙を何度も読み返している。 水がこぼれた。その両目から、水が次々に溢れて止まらない。 もう卒業式だから、この手紙を届けに行くんだ。 あの桜の木の下に埋めれば、だれにも気づかれずにキミのもとへ届くだろう。 自分には、見えたりする訳じゃないけど、いるんだ。木の下には君がいる。 たぶん。いや、絶対に。 キミと過ごした日々を、キミのことを、自分は忘れられない。いや、忘れない。 この先、ずっと。
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