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雪光は最初気を遣っていたのか、俺が話しかけないと喋らないことが多かった。しかし、一周間も立たないうちに、もっと良い猫缶を出せ、この毛布は肌触りが悪いと、文句を言うようになった。生意気言うな、とケンカしたこともあったが、雪光と過ごす日々は本当に楽しくて、気づいたら一年経っていた。
そんなある日のことだ。その日は雪が降っていたから、コタツに入ってゴロゴロしていた。雪光と出会った日も雪が降っていたなぁ、などと考えていると、雪光が真剣な顔をして俺の前にやってきた。
「お?どうしたんだ、そんな真剣な顔して。腹でも壊したか?」
いつもの調子で聞いてみるが雪光は表情を変えない。
「冬真。実はワシはもうすぐ死ぬ。だから、最後に礼を言っておきたかったのじゃ」
一瞬、何を言っているのか分からなかった。
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