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夏場の売り上げへの懸念、ネットでの反応、八代の熱意。これでは、ただ不安だとだだをこねる自分が、あまりにも恥ずかしくなってくる。
八代は自分の不安も分かった上で、こうして手をさしのべてくれる。その信頼に応えたかった。
「少し、頑張ってみたいな」
おずおずと言葉を返した。瞬間、八代の顔がぱあっと明るくなる。
できれば催事には八代が出てくれるとうれしいんだけど、と遠慮がちに言うと「了解、店も開けてたいしな」と二つ返事で帰ってきた。
「これを機に催事限定商品とか考えちゃったりしない? 夏向けのやつ」
「それいいね、兄さんなんかない?」
さっきまで不服そうな顔をしていた咲希も、八代の提案に乗っかった。気持ちの切り替えの早さは咲希のいいところだ。しかし、唐突に感じるときが多く、蒼衣はペースについて行けない。
「あー……なんか、考えとくね」
あいまいに微笑むことしかできなかった。
「そうだそうだ、咲希さん、他にどんな店が出るの?」
「えっと、名古屋を中心に、中部東海の有名なところに声かけてんだ。リスト見せよっか? 一応社外秘だから、内緒ね」
リストを見せてもらうと、そうそうたるメンツの中に『パルフェ』の文字があった。
瞬時に、蒼衣の表情が固まった。
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